ドラマと映画の違い【空飛ぶタイヤ】比較から見えるそれぞれの魅力 ※ネタバレ注意
『空飛ぶタイヤ』のドラマと映画ってどう違うの?
基本は原作に忠実だけどそれぞれに魅力が多い作品だもんね。
では、『空飛ぶタイヤ』の2つの実写化作品、ドラマ版と映画版の違いを比較しながらその魅力を探っていきましょう♪
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『空飛ぶタイヤ』とは?
『空飛ぶタイヤ』は現在、4つのカタチで世に出ているようです。
原作小説 | 漫画 | 映画 | ドラマ |
『空飛ぶタイヤ』 上・下 講談社文庫 |
『空飛ぶタイヤ』 上・下 講談社BE・LOVEコミックス |
『空飛ぶタイヤ』 松竹配給 |
『空飛ぶタイヤ』 WOWOW連続ドラマW |
この記事では、ドラマ版と映画版を比較していきます。
比較するために小説にも触れます。漫画版は触れませんが気になる方は無料試し読みできるサイトを紹介しておきますね。
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空飛ぶタイヤ 原作は『半沢直樹』の池井戸潤
『空飛ぶタイヤ』の原作は『半沢直樹』『下町ロケット』などの原作者として知られる小説家、池井戸潤さんの小説です。
2006年9月16日に最初の単行本が実業之日本社より出版され、今は講談社文庫から上下分冊で出版されていますね。
2002年に発生した三菱自動車製の大型トラック脱輪による死傷事故や三菱自動車によるリコール隠し事件などが下敷きとなっているそうです。
空飛ぶタイヤ ドラマはWOWOWだからこその見応え
初めて映像化されたのが2009年、WOWOWの連続ドラマWでのドラマ版です。
自動車メーカーなどがスポンサーである民放のテレビ局ではなかなか扱えないようなテーマに真っ向から取り組める民間衛星放送の強みを生かしたドラマです。
連続ドラマW自体もスタートしたばかりの初期の傑作ですね。ドラマ好きなら一度は見ておきたいドラマです。
空飛ぶタイヤ 映画が最新のメディア
映画版は2度目の映像化作品ということになりますね。
池井戸潤さんの小説だと『下町ロケット』も『空飛ぶタイヤ』とほぼ同じスタッフで連続ドラマWでドラマ化され、数年後にTBSが改めて2度目のドラマ化をしました。映像化に向いている作品が多いというのは小説を読んでみてもわかります。
劇場公開は2018年。映画用に大幅に改変するというよりは重要なところを抽出した要約版的な要素が強く、そういう意味では原作に忠実な映画化といってもいいでしょう。
物語上での登場人物の掘り下げ方にはドラマ以上に限界があるため致し方ないですが、そこを逆にうまく生かしてエンターテインメント性が増し見やすく仕上がっています。
空飛ぶタイヤのストーリー
赤松徳郎が社長を務める赤松運送のトラックが運送中に脱輪。外れたタイヤが歩道を歩いていた母子を襲い、幼い子の目の前で母親が即死します。赤松運送は整備不良による業務上過失致死傷の容疑で調べられることに。その事故車両の調査を行ったのはトラックの製造・販売元である財閥系ホープグループのホープ自動車。しかし、過去にリコール隠しで組織改革をし生まれ変わったことになっているホープ自動車は性懲りもなく構造上の欠陥があるトラックのリコール隠しをしていました。赤松は自社の整備に問題がなかったことに確信を持ち、ホープ自動車、ホープ銀行、警察、そして被害者遺族からの総攻撃に対し真っ正直に立ち向かっていくことになります。その中で、ホープ自動車のクレーム処理係の課長・沢田や、ホープ銀行でホープ自動車への融資を担当する井崎らとそれぞれの周囲の人たちの葛藤のドラマが描かれます。
空飛ぶタイヤ それぞれの受賞歴
池井戸潤さんの小説は文学賞にノミネート、小説を原作にしたドラマ・映画の映像化作品はそれぞれに受賞歴があります。
どれだけ名作かがわかりますよね。
小説 空飛ぶタイヤ と各賞
小説『空飛ぶタイヤ』は、受賞は残念ながら逃しているようですが、第28回吉川英治文学新人賞、第136回直木三十五賞にノミネートされていたようです。
残念ながら受賞は逃したようですがノミネートされるだけでも凄いですよね。毎年星の数ほどの新作小説が出版される中でのほんの一握りですからね。そんな中で2つの大きな賞の候補に挙がったわけですから。
ドラマ 空飛ぶタイヤ と各賞
東京ドラマアウォード2009での連続ドラマ部門優秀賞
第26回ATP賞テレビグランプリ2009でのグランプリに加えてドラマ部門最優秀賞を受賞
凄いですよね。
第26回ATP賞テレビグランプリ2009に至ってはドラマ部門のみならず、全テレビ番組の中でのグランプリですからね。
このドラマが傑作といわれる理由を見事に物語っている受賞歴です。
映画 空飛ぶタイヤ と各賞
これも凄い…。賞は一種類ですが、その中で9部門ですよ。
素晴らしい結果ですよね。
なるほど、確かにチームとしてしっかりした作品にまとめたなという感じは作品を見ていて感じるので最優秀とはいかずとも納得です。
空飛ぶタイヤ ドラマと映画の比較1 演出の違い
では、ドラマ『空飛ぶタイヤ』と映画『空飛ぶタイヤ』の中身について、どこがどう違うのか?
まずは演出的な部分から詳しく解説していきます。
空飛ぶタイヤ ドラマと映画比較 演出の違い① カッコよさの違い
ドラマ版の『空飛ぶタイヤ』と映画版の『空飛ぶタイヤ』はカッコよさに違いがあります。
片方がカッコよくて片方がカッコよくないという意味ではありません。
当然物語自体がカッコイイのでどちらもカッコイイんです。
でもそのカッコよさの種類が違うんですね。
▶ドラマ版『空飛ぶタイヤ』のカッコよさ
ドラマ版『空飛ぶタイヤ』はとてもリアルです。ある意味泥臭くもある。
仲村トオルさん演じる主役の赤松徳郎がとにかく七転八倒します。
主人公が徹底的に物語からいじめぬかれる感じ。
なぜ世界はそんなに彼をいじめるのか!?と言いたくなるくらいに。
その試練を受ける仲村トオルさんの表情も「もう勘弁してくれよ!」という感じで顔をクシャクシャにしながら頑張ります。
諦めそうにももちろんなります。
もうダメかな…ってなった時に何とか光が見えてもう一回頑張るか!となる。
そして、まだまだいじめられる…。
その逆境に立ち向かうカッコよさですね。
他のキャラクターのカッコよさもそうです。
主役の赤松徳郎と敵対する形となってしまうホープ自動車カスタマー戦略課長の沢田を演じるのは田辺誠一さん。そしてホープ銀行でホープ自動車の担当である井崎を演じるのが萩原聖人さん。
彼らの企業人、銀行員としての等身大の価値観と葛藤もとてもリアルなんですね。
決してヒーローではない人たちの泥臭い中での葛藤というカッコよさ。
これがドラマ版『空飛ぶタイヤ』のカッコよさだと思います。
▶映画版『空飛ぶタイヤ』のカッコよさ
映画版『空飛ぶタイヤ』はもっとわかりやすいカッコよさとして演出されています。
まずビジュアルがみんなスマートです。特に中心的な3人。
赤松徳郎=長瀬智也
沢田=ディーン・フジオカ
井崎=高橋一生
イメージできると思いますがイケメンスター総出演という感じ。
赤松徳郎は赤松運送の作業着ジャンバーを着たりもしますがスーツ姿も多い。
どちらにしても背筋が伸びて堂々としている長瀬智也さんが野太く骨太に一連の苦難を受け止めます。社員を背負って堂々と問題と対峙する…折れない…
…なんか、ケンシロウっぽさがある(笑)
「なんでウチが!」と悔しさいっぱいに泣きそうな顔になりながら這いつくばるドラマ版の仲村トオルさんの赤松徳郎とはだいぶイメージが違います。
沢田も田辺誠一さんが演じた等身大のサラリーマンよりちょっとシュッとしたやり手のサラリーマンっぽさが前面に出ているんですね。
一番雰囲気が違うのが井崎ですね。
高橋一生さんが寡黙ながら読めない表情でスマートにホープ自動車の常務と自分の上司を出し抜くやり手の銀行マンのような印象で描かれます。
ドラマ版で萩原聖人さんが演じた井崎は婚約者の叔父がホープ自動車の常務でとてもお世話になった間柄でもあるという設定でした。
そんなとてつもない重圧の中で、自分のなかの正義とのせめぎ合いで苦しむという役どころでしたからね。
明らかに映画版はわかりやすいスマートなカッコよさ、ヒーローっぽいカッコよさがこの3人にはあります。
空飛ぶタイヤ ドラマと映画比較 演出の違い② エンターテインメント性の違い
カッコよさの違いもと重なりますが、言い換えるとエンターテインメント性の違いともいえると思います。
どちらもエンターテインメント性は非常に高いのですが、エンターテインメント性の種類が違うんですね。
ヒューマンドラマとして、それぞれの立場からくる意見の違いをじっくり掘り下げた骨太エンターテインメントがドラマ版。
ヒューマンドラマを下敷きにしつつもテンポのいいヒーローもののようなエンターテインメント性をより前面に出したのが映画版。
…というとわかりやすいと思います。
空飛ぶタイヤ ドラマと映画比較 演出の違い③ 周囲のキャラクターの省略
小説版には多くのキャラクターが登場します。
ドラマ版では全5話でじっくり描かれましたが、それでも若干省略されています。
映画版は2時間で完結させるという荒業が求められますから大幅に省略されているわけです。
ただし、省略著しい映画版の質が落ちたのかというと、そういうことはなく省略させることによって生まれるスピード感と軽やかさをエンターテインメント性というカタチに浄化できています。
原作を省略しながら映画化した作品の中でもとてもいい成功例だと思います。
もちろんドラマ版は重厚な意味での良質エンターテインメントということになりますよね。
空飛ぶタイヤ ドラマと映画の比較2 物語の違い
媒体が違えば見せかたも当然変わります。
同じ映像作品とは言え、テレビドラマと映画では「文法」も変わってきます。
次は物語の違いを比べてみます。
空飛ぶタイヤ ドラマと映画比較 物語の違い① 尺による物語の構造
先の「演出の違い」でも触れましたが尺の都合による物語の違いというのは当然出てきます。
原作は2冊ともザっと図書館でドラマ放送直後に一通り目を通しました。
ドラマ版に関しては物語自体はほぼ原作そのままのイメージです。
ドラマでは見覚えのないシーンが出てきたという記憶がありません。
厳密には登場人物がカットされていたりはするので完全にそのままではないんですけどね。
映画版は当然大幅にカットされています。
しかしよくあるように構成や解釈や設定が大きく変わったという部分はありません。
登場人物を省略することでエピソードも省略され、つながりを整えた程度。
ドラマも映画も原作をとても大切にしている映像化としてファンには好印象だと思います。
空飛ぶタイヤ ドラマと映画比較 物語の違い② 登場人物設定の違い
ドラマ版『空飛ぶタイヤ』でも赤松夫婦の子が3人兄弟から一人っ子になっていたり、原作では男性のキャラクターがドラマでは女性だったりという設定の違いはありました。
当然映画版はさらに省略する必要が出てきます。
ドラマファンで映画版を物足りなく感じることがあるとすれば、赤松の妻子は登場するものの沢田と井崎のパートナーが登場しないことでしょう。
ドラマ版では沢田の妻を本上まなみさんが、井崎の婚約者をミムラ(現・美村里江)さんが演じます。
井崎の婚約者はホープ自動車の狩野常務の姪という立場もあってとても悩む役。
そして沢田の妻は沢田の心の奥に隠れている正義を信じていつも穏やかに見守るお手本のような妻。
しかし、映画ではどちらも登場しません。その代わり映画版の赤松の妻は(深田恭子さん)がドラマ版の沢田の妻のような穏やかさを見せます。
ドラマ版の赤松の妻は戸田菜穂さんが演じられ、赤松と一緒に時に泣き崩れながら苦しみながらたくましく成長していきます。
こういうヒロインたちの魅力は映画版では深田恭子さんと記者役の小池栄子さんにゆだねられたという感がありますね。
ドラマ版ではさらに記者役を水野美紀さんが演じ、さらにさらに内部告発をした杉本(映画では中村 蒼さん演じる男性キャラ)を尾野真千子さんが演じますからヒロインパワー増しま増しです。
各登場人物がそれぞれに影響し合って巨大財閥の闇に立ち向かっていく様子が丁寧に描かれている点でドラマ版は見応えがハンパないですね。エンターテインメンのひとつ上の領域に行っています。
空飛ぶタイヤ ドラマと映画の比較3 キャラクター&キャスト比較
演出や物語の違いも作品の世界観を大きく変えます。
世界観ということで言えば、もちろん演じる役者さんたちによってもそれは大いに違ってきますよね。
各キャラクターとキャストを表で比較してみました。
原作小説 | ドラマ版キャスト | 映画版キャスト |
赤松 徳郎 | 仲村トオル | 長瀬智也 |
沢田 悠太 | 田辺誠一 | ディーン・フジオカ |
井崎 一亮 | 萩原聖人 | 高橋一生 |
赤松 史絵 | 戸田菜穂 | 深田恭子 |
赤松 拓郎 | 小清水一揮 | 高村佳偉人 |
宮代 直吉 | 大杉漣 | 笹野高史 |
門田 駿一 | 柄本佑 | 阿部顕嵐 |
巻田 三郎 | 西岡徳馬 | 升毅 |
小牧 重道 | 袴田吉彦 | ムロツヨシ |
室井 秀夫 | 相島一之 | 和田聰宏 |
杉本 元(恭子) | 尾野真千子 | 中村蒼 |
狩野 威 | 國村隼 | 岸部一徳 |
榎本 崇(貴和子・優子) | 水野美紀 | 小池栄子 |
沢田 英里子 | 本上まなみ | |
高幡 真治 | 遠藤憲一 | 寺脇康文 |
ミムラ(佐々木 香織ドラマのみ) | ||
柚木 雅史 | 甲本雅裕 | 浅利陽介 |
柚木 妙子 | 山口もえ | 谷村美月 |
柚木 貴史 | 佐藤詩音 | ? |
他にも小説だけ、ドラマだけ、映画だけの登場人物もそれぞれ存在しているようです。
映画だけの登場人物が多いのは意外ですが、削除しただけでは話はつながらないので自然な流れにするために補強の登場人物が沢山出ているということなのかもしれませんね。
空飛ぶタイヤ ドラマ&映画比較まとめ
映画は原作やドラマの深みや重みを求めて観ると肩透かしになっちゃうかもしれません。
本質をしっかりと抽出しつつより見やすいエンターテインメントとして、ちょっと少年漫画チックな男同士のドラマ感も醸し出しました…みたいな作品が映画。
そう思ってみるととてもよくできています。
つまりは原作やドラマを観ていない人が初めて触れる『空飛ぶタイヤ』としては何の問題もない、とても見応えある作品でしょう。とくに『半沢直樹』のドラマが好きだったら絶対おすすめですね。
映画であの話の本質に惚れて、さらに深く知りたくなったらドラマ版を観るともっともっと深く楽しめると思います。
逆に映画のスラっとした長瀬智也さん、ディーン・フジオカさん、高橋一生さんのスマートなカッコよさを求めてドラマを観てしまうと理想を壊されちゃうかもしれませんね。
巨大企業の闇と戦う赤松運送…赤松徳郎のネバーギブアップドラマという本質、間違っていることは間違っていると言える当たり前の企業であって欲しいと願う働く人たちの思い。
そういう本質はどちらにも貫かれています。
つまり、どちらもお勧め!そこは間違いないです!
全ての物語のために
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