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映画【スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム】は救いがなくてつまらないの?面白いの? 評価・感想まとめ

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映画【スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム】は救いがなくてつまらないの?面白いの?
評価・感想まとめ

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ってつまらないの?面白いの?どっち?

「救いがない」とか「悲しい」という感想もよく聞くね…

この記事では映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の評価・感想をまとめて分析して紹介しています。
つまらないのか面白いのか?観るか観ないか?迷っている人、観たけどみんなはどう思っているのか知りたい人の参考になると思います。

※この記事では一部ネタバレもあります。

わたしは大好きです。MCUの中でも何度も観返している作品です。この記事では客観的に皆さんの評価・感想を観ていきますね。

>>『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を面白く観るための順番を知りたい方はコチラ

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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』つまらないの?面白いの? 評価・感想の全体像

有名な評価・レビューサイトの中で5点満点評価があるサイトを観てみました。

評価・レビューサイト 評価点
Filmarks 4.4
映画com 4.2

※2023/10/21時点の評価点です。

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通常は3.5でもなかなかの高評価だと思います。
4.2以上はかなりの高評価ですね。

ほとんどが高評価ですが、今回は低評価を探すのもあまり苦労はしませんでした。
何せ全体の量がハンパない。

低評価も高評価も多く読めば読むほど、共通しています。
興味深かったのはこの作品の良し悪しが本当に表裏一体なんだなということです

そして、作品が犯した罪も含めて奇跡的なバランスを実現した作品であることもよくわかりました。

では、まずは低評価の人たちの感想から観ていきましょう。

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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』つまらない! 低評価の感想

わたしの評価は高いのですが、低評価の人の意見と同じことも感じました。
最大限に楽しむためにも対照的な視点として知っておくのも悪くないですね。
特に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に関しては低評価にも良い意見が多いと思いました。

  • 全部自業自得、ガキ過ぎてイライラ
  • サプライズ頼みで内容がつまらない
  • あれもこれも出せばいいわけじゃない
  • 最近のマルチバースのはやりに乗っただけ
  • 話の展開とキャラの扱いが雑
  • 主人公の考え方が傲慢
  • 他のシリーズ観てないからわけわからん
  • 悲しすぎたので点数下げる

ひとつずつ観ていきましょう。

全部自業自得、ガキ過ぎてイライラ

「全部主人公のせいじゃん なにやってるのコイツ」
「主人公が子供っぽすぎてカッコよさを感じない」

などなど。
この指摘はちゃんと的を射てはいます。

実はこれ『ホーム』シリーズ3部作通して物語上とても重要な部分です。
言い換えれば、映画のテーマとして1番の味のしどころです。

超重要なので、高評価まで観た後に説明します。

サプライズ頼みで内容はつまらない

終始、サプライズの連続です。

お祭り映画だとを感じても無理はない。

仮面ライダーVSスーパー戦隊をハリウッドがやっちゃった感大爆発のお祭り騒ぎスケールです。

だからそこに目も心も奪われちゃうのはわかります。
本当はそこだけじゃないのがこの映画の凄いところなんですけどね。

お祭り感に目を奪われて1本の映画としての良さに感性を裂けなかったとしても…
それはもう豪華すぎるせいなのかもしれません(笑)

これまでの…ハリウッド映画の歴史を変えるほどのサービス特盛精神で作られてますからね。

あれもこれも出せばいいわけじゃない

コレももうよくわかります。

登場人物を絞って、じっくりと描いてくれ…
競演ものや大集合ものよりじっくりとキャラクターたちのドラマが観たいんだよ…と。

本当はシリーズ追えばそうな風に楽しめるし、想像力でもカバーできるんだけど…
というのはわたしのような競演もの大好き人間の意見ですね。

でも、まあそういう人は観る作品を間違えたか、この作品に求めるものを間違えたか…

『アベンジャーズ』シリーズもお見事でしたがこの作品も競演を物語に浄化させた見事な作品です。

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実際にコレだけのメンバーを出してよくここまで深く表現できるな…と感心するレベルなのですが、その実力を感じるからこそもっとじっくり描いて欲しいという気持ちはわかりますね。

最近のマルチバースのはやりに乗った感じ

結構多かったのですがコレは的外れです。
最近のマルチバースのはやりを作ったのがこの作品ですから。

コイツが犯人だ!…です(笑)

この少し前に『スパイダーマン:スパイダーバース』というマルチバースもののアニメ映画がありました。
仮面ライダーやスーパー戦隊のみならず、日本のアニメや漫画では昔から無数に存在します。

洋画でも昔からちょいちょいマルチバースは使われてきました。

なによりもマーベル・コミックスの一連の漫画のシリーズとしても昔から収集つかないくらいに使い倒されていますよね。

ただここ最近のようにメジャーになるような題材ではなかっただけ。

マルチバースを多くの人に届けて最近のブームにしたきっかけがまさにこの『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でしょう。

話の展開とキャラの扱いが雑

これは的を射ていると思うし、実際そう言われても仕方のない部分も多くあります。

しかし、表裏一体で「話の流れ・キャラの扱い・雑さの加減」まで含めて、緻密な塩梅でバランスをとった奇跡的な作品とも言えます。

そこも重要な点なので後ほど。

主人公の考え方が傲慢

過去の『スパイダーマン』作品に登場したヴィラン〈敵〉たちが、3代目スパイダーマンの前にマルチユニバースの垣根を超えて現れる…
お子ちゃまピーター・パーカーは平和ボケよろしくヴィラン〈敵〉を倒すのではなく「治療」できないかと考える…

この考え方が傲慢じゃないか!?

と感じる人が結構いました。

最初に紹介した「自業自得すぎる」というのとはまた違った意味での主人公の子どもっぽさが出る部分です。

ここも作品に対する議論としてとてもいいテーマなので後述しますね。

実はわたしも初めて劇場で観たときに一瞬引っかかったところです。
でも一瞬で過去作の記憶をギュルギュルギュル~~~!とたどってすぐ解決しましたから。

他のシリーズ観てないからわけわからん

シリーズものの宿命…ですが、
「仕方ありませんね」と片付けるつもりはありません。

高評価の意見に正反対のものがあります。

なぜ、この違いが出るのか?

コレは他の記事でも書いていますが、この記事でも後ほど少し触れますね。

悲しすぎて点数低い

素晴らしい!
こういう人も多かったです。

作品はとても楽しんで感動して号泣して…でも結末が悲しすぎて点数を下げた…

という人ですね。

思いっきり作品世界に身をささげてる感じが清々しいですね。

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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』面白い! 高評価の感想

では、高評価のほうも観ていきましょう。

  • MCUの中でもスパイダーマンシリーズの中でも傑作
  • 悲しいけど好き 切な過ぎたけど好き
  • 歴代作品との繋がりに鳥肌たった 涙が出た
  • この企画の映画を完成させたことに感動
  • 最近のマルチバースものは難しいけどコレはよかった
  • テンポよく笑いあり涙ありで感動した
  • 初めてスパイダーマン観たけど面白かった

それぞれ見ていきましょう。

MCUの中でもスパイダーマンシリーズの中でも傑作

歴代スパイダーマンもMCUも両方観てきた人の意見ですね。

MCUは『アベンジャーズ』というシリーズを全体のクライマックスとし、周辺の全作品をからめて大成功させてきました。
現状では最後の『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』のあのクオリティを知っているMCUファンでも今作を絶賛している。

いっぽう歴代スパイダーマンシリーズはソニー・ピクチャーズが誇るハイクオリティのヒーロー映画シリーズです。

どちらも根強いファンが多いシリーズ。

ところが、歴代スパイダーマンシリーズのファンの中には前作の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』までの3代目スパイダーマンを好まない人も多かった…
という事実があります。

前2代のスパイダーマンはどちらもプロローグで大人になることを強要され、スパイダーマンとして戦い始めます。
それに対して3代目は子どものままスパイダーマンになって浅はかにやらかしまくる。

前2代のスパイダーマンが多大なる重責を背負っているのに対し3代目は「大人から見ると」遊び半分に見えちゃう。

「スパイダーマンはこうじゃない!ピーター・パーカーはこれじゃダメなんだ!」

そう思うのもわかります。

ところが、今作では前作の『ファー・フロム・ホーム』までそう思っていた歴代スパイダーマンのファンの人たちも高評価をした人が沢山いる。
しかも、全てのスパイダーマン作品の中でもコレは傑作だという。

それには、いくつか奇跡的なバランスで混在する要因があると思います。
これも後述しますね。

悲しいけど好き 切な過ぎたけど好き

これは低評価で紹介した「悲しすぎて点数低い」の人たちと同じ気持ちの人たちでしょう。

どっちの気持ちを点数に反映させるか?
つまり表現が違うだけ。

低評価の人たちは「そこまで救いをなくする必要があるのか…」と胸を痛めた。
高評価の人たちは「それでも自分の信念を貫ぬく姿がよかった」「寂しいけど温かい終わり方に胸が詰まった」と…。

わたしも絶望してこの映画が大好きになったので、本当によくわかります。

歴代作品との繋がりに鳥肌たった 涙が出た

これは特に歴代スパイダーマンシリーズを観てきた人たちの感想ですね。

ウィリアム・デフォーが悪役を演じた1代目トビー・マグワイア版『スパイダーマン』に始まり、
ファンもビックリ、まさかの2作目でシリーズ打ち切りとなった2代目アンドリュー・ガーフィールド版のショッキングな幕切れ。

前2つのシリーズが残した遺恨を今作の混乱からエンディングまでの伏線として見事に回収していくストーリー。

「また若い俳優を起用して仕切り直しかよ」と…
中途半端に投げ出された歴代スパイダーマンのファンの気持ちを救おうとしているかのうような脚本でした。

「いろんなスパイダーマン映画が一気に救われた感じ」という感想がそこかしこで観られましたが象徴していますね。

『スパイダーマン』シリーズ
初代ピーター・パーカー

(トビー・マグワイア)
『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ
2代目ピーター・パーカー
(アンドリュー・ガーフィールド)

もちろん、低評価も一定数いるように、「求めていたアプローチとは違う!キャラの扱いが雑」と感じた人もいるのは間違いないです。
でも、全体の割合が示しているように、大きな意味では成功と言えるでしょう。

また、わたしが初めて劇場で観た時に「ん?これで良いのか?」と迷ったあとに「これで良いんだ!」と強く思い直せたように、今後見返して良いほうに捉え方が変わる人も沢山出てくるかもしれません。

この企画の映画を完成させたことに感動

「コレこそがスパイディがMCUに参入した意味だ!」
といってしまっても過言ではないでしょう。

MCUという世界観の良さ、歴代スパイダーマンシリーズの未回収だった遺恨。
それらが組み合わされて物語に浄化されている。

MCUがもつ自由さと、マーベル・スタジオとソニー・ピクチャーズの奇跡的なコラボレーションの実現というチャンスを大いに生かしていますよね。

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日本では違う世界線のキャラクターの共演というのは以前からあります。
しかし、ハリウッドでは間違いなく映画のタブーを犯す試みです。
これだけの俳優陣が揃うのもそういった意欲的な挑戦に共感をしたからでしょう。
(吹替版も声優陣・俳優陣が集結していますよ♪)

感動・感謝ですよね。

ここも後ほど掘り下げます。

最近のマルチバースものは難しいけどコレはよかった

最近のマルチバースものというと…

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
『ザ・フラッシュ』
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

あたりでしょうかね?

マーベル・コミックスかDGコミックスのヒーロー映画だけかと思ったら…
アカデミー賞受賞作品『エブエブ』がありましたね。

確かに『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』以外は難解な部分もあるかも。

テンポよく笑いあり涙ありで感動した

感動したという意見も多かったのですが、「感情がごちゃごちゃ」という意見も多かったですね。

148分がものすごく短く感じたという人も大勢いました。
前半のどこか茶化したような、でもワクワクの展開にクスクス笑いつつ後半は悲劇。

悲劇の中での激アツ展開と悲しすぎる結末…

すりゃあ、感情ぐちゃぐちゃなりますって。

初めてスパイダーマン観たけど面白かった

低評価の「他のシリーズ観てないからわけわからん」の真逆の感想です。

「マーベル作品デビュー!!初めてのスパイダーマン、わからないことも多かったけどずっとワクワクしながら見れた」

「マーベルもスパイダーマンも観た事なかったけど観やすくて良かった」

など……こういう人たちは、あるがまま楽しめてる人ですね

どんな続編ものでも言えることですが、「続編だからわからない」という思い込みに気づけば、ほとんどの映画の続編は全作予習なしに楽しめるんです。

その辺りは以下の記事で詳しく説明しています。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』評価・感想X(Twitter)での生の声

ではここで、X(Twitter)から『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を観た人たちの生の感想が垣間見えるポスト(ツイート)をいくつかピックアップしてみましょう。

 

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』低評価・高評価から観える楽しみどころは?

映画の楽しみ方は人それぞれ……というのは大前提として(ひとまず置いといて…笑)

ここまで観てきたみんなの評価・感想から読み取れる『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の楽しみどころについてみていきましょう。

映画の歴史を変えた企画実現力

映画の歴史を変えるほどの企画と実現力はこの作品最大の見どころですよね。

『アベンジャーズ』シリーズを含むフェーズ1~フェーズ3のインフィニティ・サーガを見事に完結させたことで証明されたMCUの調整力

それに加え、凄いのはソニー・ピクチャーズの決断です。

当初…前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』公開時にはソニー・ピクチャーズとディズニーは決裂し、以降MCUにスパイダーマンが登場することは無いとソニー側から公表されていました。

ところがファンの声の代弁者となりトム・ホランドがソニーに直談判
これによりソニーとディズニーの折り合いがついて3作目も制作スタート!

…と報じられただけで凄いな~と正直思っていました。

もう、その事実だけで充分幸せでしたよファンは。

それが、3代目スパイダーマンだけではなく全く関係のなかった歴代スパイダーマンの世界の壁まで超えてしまうとは!

低評価に「あれもこれも出せばいいわけじゃない」を筆頭に類似の意見は複数見られました。
「儲けられるならなんでもいいのか」「これじゃファンの二次創作じゃないか」などなど、今回のような作り方に対する批判は複数ありました。

でもですよ。
そもそもMCUがスタートしたときは、
「『アベンジャーズ』なんて集合映画が上手くいくわけがない…」
とみんなが思っていました。

「どうせやり切らないうちに途中で企画がとん挫するだろう」
「集合映画を作れても薄っぺらいお祭り映画になるだけだ」

そんな冷ややかな意見をしり目に、まずマーベル・スタジオがやったことは…
人気が無くて映画化権の買い手がなかったヒーローたちの単独映画を作ってヒットさせたこと。
アイアンマン、ハルク、キャプテン・アメリカ、マイティ・ソー……

初めは特定のヒーロー映画ファンがざわついているだけ。
そんなコアなファンも(わたしも)本当に『アベンジャーズ』を成功させるまで計画が続くの?
と疑っていました。

そんな中、『アベンジャーズ』は予想をはるかに超える大成功をおさめます。
全ヒーローそれぞれの個性を活かした見事な脚本と作品の完成度

日本公開は2012年の8月でしたが2011年の冬から「日本よ、これが映画だ。」のキャッチコピーとともにテレビCMもバンバン放送されていました。
「アドベンチャーズ?アベンジャー?なにそれ?」なんて思いながら初めてマーベルヒーローたちが凄いことになっていると認識した人も多いはず。

1作目の『アベンジャーズ』でMCUのフェーズ1を終え、
フェーズ3のクライマックス『エンド・ゲーム』まで雪だるま式にファンを増やしながらヒットさせていったわけです。

今でこそ王道ですが、スタートは異端なのがわかるでしょう。

いっぽうソニー・ピクチャーズは『スパイダーマン』1代目と2代目でさえ全く関連のない別作品として貫いてきました。
これが普通のハリウッドメジャースタジオの在り方ではないでしょうか?
当然それも1作品ごとの世界観やクオリティを大切にしてのことです。

この姿勢は『X-MEN』の世界をスピンオフで広げていった20世紀FOXと比べても頑なだったことがわかりますよね。

でも、そんなソニーは自分たちが囚われている壁を『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でぶち壊したわけです。
タブーを思い切り犯して壁を粉々に打ち砕きました。

儲かれば何でもする?
でもそれは…「ファンメイドの二次創作」と言われてしまうほどに…ファンが欲しているものを思いっきり作ってみせた。
自社作品間でさえ頑なにその世界観を守ってきたソニー・ピクチャーズが極限までファンに寄り添って見せた…
そうも言えるわけです。

後で書きますが、タブーを破った罪ももちろんあります。

でも、そのリスクをとってここまで結実させた勇気とMCUとの企画力・実現力。

これには感謝しかありません。

一貫して見せたジョン・ワッツ監督のテーマ

低評価で紹介した「全部自業自得、ガキ過ぎてイライラ」という声。

歴代スパイダーマンのファンだけど3代目のMCUスパイダーマンは気に入らないという人も多くがこの部分が原因でしょう。

でもコレは3代目のトム・ホランド版スパイダーマン3部作を監督したジョン・ワッツの映画作家としてのテーマの根幹です。
つまりは映画としての1番の味わいどころ。

ここを読み取れないと「自業自得だろ」「子どもっぽすぎ」だとイライラして当然。

子どもは良くも悪くも子ども。大人は良くも悪くも大人。

これをジョン・ワッツ監督はシリーズ一貫して描いてきたんですね。

だから子どもの浅はかさ、バカな部分が発露してとんでもないことが起こる。
迷惑をこうむったり、叱り、しつけたりするのは大人の役割です。
そして時に本当にヤバい大人まで怒らせちゃう。

でも、一方的に子どもの愚かさ、大人の良識だけを描きはしない。
純粋であるがゆえに一瞬で大人の分別・常識を超えてくる子どもらしさの可能性も描く。

ケビン・ベーコン主演の『COP CAR/コップ・カー』という映画があります。
この映画はジョン・ワッツ監督の原石で作られたような作品なのでいつか時間があるときに観てみることをお薦めします。

少年たち…ガキども…がパトカーを使ってバカなことをしでかします。
そのパトカーは本当にヤバイ大人=悪徳警官のものでした…

自業自得のガキども……されど純粋な面のある子共。
大人を怒らせると来わんんだぞ……されど所詮は大人の凝り固まった想像力。

この大人と子どもの違いを描きながら物語が進んでいくんですね。
まさにMCU版トム・ホランドが演じてきた3代目スパイダーマンの物語ですよね。

歴代2人のスパイダーマンよりも子供っぽいスパイダーマンとして登場させることができたのはMCUあってこそだと思います。

歴代スパイダーマンたちも科学が得意な学生で、彼らが尊敬し彼らを導く大人がいました。
ところが悲しいことにその大人たちが亡くなったりヴィラン〈敵〉化したりしました。

両者とも最初の悲劇は1作目でスパイダーマンとして立ち上がる前に親代わりである伯父をなくします。
しかも、それが間接的ながら自分の責任なんですね。

そこから孤独なヒーローとして成長するしかなくなっていくわけです。

でもMCUではピーター・パーカーを導く役の大人としてトニー・スタークが登場する。
さらにアベンジャーズやアベンジャーズ周りの屈強な大人たちに囲まれることになります。

悪く言えば、幸か不幸か子どものままでいても許されてしまう環境がありました

3作目である『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ではそれがドクター・ストレンジですね。

その「子どものままで許される」状況の結果がどうなるのか?

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ではこのジョン・ワッツ節を最後まで貫いてこれらの状況を上手にクライマックスへつなげていきますよ。

「悲しすぎる」という多くの感想が指摘する部分

低評価にも高評価にも多く登場した「悲しすぎる」という感想。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のどの部分がそう感じさせるのか?
はネタバレになるのでここではお伝えしません。

とは言え、もうお分かりの通り大きな見どころの1つであることは間違いありません。

なので、何度もシリーズを観返したものとしてお伝え出来ることだけを説明します。

「スパイダーマンが幼すぎる」「ガキ過ぎる」「自業自得」
またそういうことに由来して、歴代スパイダーマンとの成熟度の違い。

歴代のスパイダーマンは好きだけどMCUのスパイダーマンは好きになれない。

こういった声も多い3代目スパーダーマン『ホーム』シリーズですが…

そもそも、ジョン・ワッツ監督の一貫したテーマ性・作家性が、MCUに登場するスパイダーマンという立ち位置からピッタリであることから監督に抜擢されたのだろうと推測できます。

ジョン・ワッツ監督作品のもうひとつの特徴として、物語を突き放しているという部分があります。
作り手として登場人物をひいきしない。
全体をドライに突き放しているんですね。

その突き放しかたが「自業自得」の帰結の仕方に繋がっていきます。

そこに…

歴代スパイダーマンよりも過酷ではないか?
救いがなさすぎる…

と感じた人もいるわけです。

そこまで背負わないといけないのか?と。

作り手の側も自業自得をわかっていて責任を取らせる。
この作り手が取らせる責任を「生ぬるい」と感じるか「厳しすぎるかも…」と感じるか。

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わたしは「突き放すなぁ!厳しい!」と感じました。
でも、それで許されるかというと…う~ん…いたしかたないのかもしれません。

ここは、実際に観るあなたがどう感じるかという部分ですね。

歴代スパイダーマンを観ている人にはわかるヒントだけお伝えすると。
感想の中に象徴的な表現がいろいろな人から出ていました。

「ああ、本物のスパイダーマンになるまでの物語だったのか…」と

過去キャラ大競演まつり

さて、一番わかりやすい見どころについても簡単に書いておきます。

お察しの通り、過去スパイダーマン映画のキャラクターたちの大競演まつりの映画であることは間違いありません。

舞台がMCUですからMCU世界のキャラクターも出てくる。

それだけでも見どころですよね。
あなたが好きか嫌いかは別として。

ただし、低評価にあったような「あれもこれも出せばいいわけじゃない」ことはわかっている。
というのが今までに紹介してきた見どころの部分ですね。

ひとりの青年の成長物語としても、各キャラクターたちのエモーショナルなドラマとしても…
そして1本のSFアクションアドベンチャーとしても、成功していると思います。

ただ多くのキャラクターを出しただけではなく、物語に効果的に機能している。

ここが本当にお見事です。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』わたしの評価・感想

最後にわたしの感想も紹介します。

ここまでに、実はわたしの感想もいっぱい紹介してきましたからわたしが『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を大好きなのはバレてしまったでしょう(笑)

なので、ここまでに語り切れなかった部分だけ補足的にサクッといきます。

成り立たせるための大味ザックリ感も大切

低評価に「話の展開とキャラの扱いが雑」「ストーリーがガバガバだった」という意見がありました。

わたしは劇場での初観で「コレで本当にいいのか?」といくつかのポイントで首をひねりました。
劇場で2回観たのは…その後配信、ソフトで何度もみていますが…そこを再確認するためでした。

ストーリーの大雑把さもそのひとつです。

見返した結論として、このストーリーは非常に緻密に練られたものだと思っています。

「大雑把な部分」も確かにありますがそこも緻密に計算されてそうなったもの…だろいうという結論。

そうしないとこの尺でこのスケールの、これだけの登場人物を活かしながらまとめられないでしょ!と。

なにを捨て何を魅せるか?

取捨選択のバランス調整上必要な大雑把さですから「緻密な大雑把さ」だと思っています。

主人公の考えは傲慢か?

低評価に多くあった「主人公が傲慢だ」という意見。
実はここもわたしが初観で首をひねった箇所です。

わたしも一瞬「傲慢じゃないか??」と考えちゃいました。

少しネタバレになりますが未観の人にわかるように説明しますね。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のピーター・パーカーの前に現れるのは歴代スパイダーマンたちの宿敵です。
つまり歴代スパイダーマンが倒してきたヴィラン〈敵〉ですよね。

「浅はか」「バカ」「ガキ」…で「純粋」な、MCU世界のピーター・パーカーはこう考えちゃいます。
元の世界に戻せば歴代スパイダーマンに殺されちゃう……なんとか助けられないか?

…と。

その助けるというのが、ヴィラン〈敵〉達みんなを「治す」「治療する」という表現を使うんですね。
ここで2種類の傲慢さの可能性が出ます。

多くの人を傷つけた罪人を「助ける」?
人格を「治す」「治療する」?

と…

わたしの結論は「傲慢でも何でもない」です。

なぜなら…

どのヴィラン〈敵〉も事故が起きて凶暴化しちゃった悲しい人たちです。
もともと本人の中にあった凶暴性やズル賢さだろうという意見もありますが、それは歴代スパイダーマンも同じ。

誰の内面にも混在する善と悪。
その悪の部分だけが事故で強制的にブーストされる…。

それを正常に戻す=事故で受けた障害を治療する=治す

まったくもって適切な表現ですよね。

「助ける」についてもそういう意味で、罪を償うことから庇ってあげるなんて言ってません。
正常な状態に戻ってから自分の世界で自分の罪と向き合ってください…ということなら至極真っ当ですよね。

傲慢だと思った人は過去作を観返すと良いと思います。

時代やノリのギャップも好き

それぞれのシリーズの世界観の違いからくるギャップは大好きです。

予告でもあったドクター・オクタビアスが名乗るシーン。
オクタビアスが大仰に名乗るとMCUの若者3人はクスッと笑って「で、本名は?」

オクタビアスの名乗り方は当時の映画の中の雰囲気なら許されたけどMCUの世界だとただの変なおじさんにみえちゃう。

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同じ世界から来たノーマン・オズボーンはオズボーンとグリーンゴブリンとコロコロ人格が入れ替わります。
オズボーンのときはオズコープ社も家も存在しない世界に迷い込んで怯えている。

ウィリアム・デフォーの怯え方もお見事でした。

『アイアンマン』から連なるMCUの世界はサム・ライミ版ともマーク・ウェブ版とも違って、もっと身近に感じられるリアリティがあります。

それは時代背景もあるのでしょう。

このギャップがさりげなく表現されているのがわたしはたまらなく好きです。

「アベンジャーズって何?バンド?」

…みたいな。

間違いなく『エンド・ゲーム』の次のクライマックス

MCUは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』で最大のクライマックスを迎えました。

インフィニティ・サーガの幕を閉じたのはその次の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』でしたがもっとも盛り上がったのは『エンド・ゲーム』でしょう。

その後、マルチバース・サーガが始まったわけですが、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は間違いなく『エンド・ゲーム』以来のクライマックスだと思います。

マルチバース・サーガ全体では、初めてマルチバースの扉を開いた作品ですからプロローグにふさわしい作品になるのかもしれませんね。

コレまで大手映画会社がそれぞれに持っていた権利の問題で共演できなかったマーベル・ヒーローたちが共演できる可能性を示してくれたという意味でもマルチバース・サーガのプロローグと言ってもいいのかもしれません。

タブーを犯した罪

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は映画の歴史を変えました。
でもそれはタブーを犯すということで叶えたわけです

こんなことをしてしまったら今後の映画に悪影響を与えかねない…

公開当時そう危惧しました。

予想通り、今は大作映画でもアカデミー賞界隈でもマルチバースものが流行り始めました

MCU本体でさえ今後本当に広げた風呂敷を綺麗にたためるのか心配になります。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は奇跡的なバランスを持った作品でしたが、それ以降はMCUもその他の映画も均等が崩れるかもしれません。

また、めったに出来ないサプライズだからこそ価値のある「共演」なのにサプライズがあることが大前提となる本末転倒感。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が犯した罪があるとしたらそういう事だと思います。

まとめ『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はつまらないの?面白いの?

わたしは公開時に2回劇場へ行き、その後配信でもソフトでも何度も観ています。

個人的には大好き。凄く面白いと思っています。

みんなの感想を見ていくと、少ないながらもやはり低評価も一定数ありましたね。

面白かったのは低評価される部分と高評価される部分が重なっていること。

人も映画も長所短所は表裏一体なのかなとも思いました。

いずれにせよトータルではかなりの高評価かなのは間違いなし!

今後のMCU、ソニー・ピクチャーズのスパイダーマン関連作品も楽しみです。

 

全ての物語のために

 

 

 

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