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映画【劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室】結末わかってても面白い!?評価・感想の分析と考察※ネタバレ注意

©2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会 配給:東宝

映画【劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室】結末わかってても面白い!?評価・感想の分析と考察
※ネタバレ注意

『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』って結末読めるけどそれでも面白いの?

実際に観た人たちの評価や感想はどうなんだろう?
ドラマ観てなかった人たちの感想も知りたいよね。

この記事では『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』の評価・感想を分析して紹介しています。
どんなふうに面白いのか?どこに期待してよくて、なにを期待したらダメなのか?参考になると思います。

みなさんのレビューに他の作品にはない特徴がありました。
かなり興味深くて面白いレビューの旅でした!
後半にはわたしの考察や感想も簡単にまとめています♪

映画『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』結末わかってても面白い!?評価・感想は?

まずは、代表的なレビューサイトの評価から観てみましょう。

レビューサイト 評価点
Filmarks 4.3
映画.com 4.3
Yahoo!映画 4.2

※2023/5/7時点

テレビドラマの延長線でドラマ化される作品として…
だけではなく、フツーに考えてもかなりの高評価ですね。

しかしレビューを読むと、この作品ならではの特徴がありかなり興味深かったです。
次にまとめますね。

大前提として…

そもそも低評価はごくごく少数です。
少数の低評価も内容を読むと感動し、楽しんだうえでツッコミどころを指摘しているものがほとんど。

以上のことを踏まえた上で、この記事ではひとまず低評価と高評価の両方を対等に取り上げています。

映画『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』ツッコミどころ多い!低評価の感想たち

低評価は探すの大変でした。
1000件以上のレビューに目を通しましたが、
純粋な不評は10人も見つけられませんでした。

それ以外の低評価は…
点数低いのに文章では結局褒めていたり、感動が伝わってきたり…
ツッコミどころだけ書いて点数は4.0以上の高評価だったり…
低評価の人は言葉と点数がバグってる!(笑)

まとめると以下のような内容。

【ほぼ純粋な低評価】
・「ありえない」「リアリティがなさすぎ」「コレで死なないわけないでしょ」
・「感動させよう感に冷めた」
・「回想シーンが多くてテンポが崩れる」

純粋に低評価&酷評をしているのはこのくらい…
いや、3つ目は低評価と言って良いか怪しいのか?

コレでは少し少ないので、高評価の中の低評価的な感想からも抜粋すると…

【その他の低評価っぽい意見】
・「医療者として、妊婦としてツッコミどころ満載」
・「ポスターダサい」
・「映画としては褒められない。周囲をクズに描きすぎ」
・「期待し過ぎた」「予告編以上を期待するとそーでもない」
・「先が読めすぎ」

では、それぞれ観ていきましょう。

「ありえない」「リアリティがなさすぎ」「コレで死なないわけないでしょ」

低評価の人が突っ込んでいる部分をまとめるとこんな感じです。

こういう部分をあげつらって、

「コレで感動している低レベルな人が多い」と国民レベルを嘆くような意見
「コレを面白がるのは危険」と真面目に心配しているかのような意見
「変だと思わないかな?冷静になろうよ」と高評価の人を諭すような意見

などけっこう辛辣な人も若干名(1人ずつ・笑)いました。

「コレを面白がるのは危険」というのは、コレが医療だと思われるのは危険ではないか?
と心配をしているような感想でした。

しかし、ここがこの作品の評価の最大の特徴です。
辛辣なことは言わないまでもツッコミどころへの感想は…
実は高評価・低評価の人たちの両方が全く同じ感想なのです。

なので後でしっかりと触れていきますね。

「感動させよう感に冷めた」

この手の作品には一定数いますよね。

「コレで死なないわけないでしょ!」
という非現実的な場面が多くて冷めたという人もいました。

…言うても2~3人でしたが。

これも成功している点と密接に関係しています。

「回想シーンが多くてテンポが崩れる」

これはドラマからのファンの人の感想です。

これで1.9の評価点をつけていました。
ドラマが好きだからこそ本当にがっかりした…というのが伝わってきました。
この意見に対して「モヤモヤしていたことを言ってくれた」と返している人も。

ここも含めてこの作品の成功にもつながっているのでこれも後半でしっかりと書きます。

「医療者として、妊婦としてツッコミどころ満載」

…という意見を書いている方、臨月だったそうです。
ほめの言葉は書いてありませんでしたが評価点は4.0…

「ポスターダサい」

スミマセン(汗)
あまりにも低評価が少ないので見つけたのはお1人でしたが取り上げさせていただきました…
実際にはこう続きます「ポスターダサいのにめちゃめちゃ良かった」
評価点は4.0。

「映画としては褒められない。周囲をクズに描きすぎ」

この方は2.5点とまあまあ低評価。
でもその前に「ドラマの延長と思いきや役者魂が凄い!」
の言葉も…

「周囲をクズに描きすぎ」
確かに厚生労働大臣やはあからさまに嫌な奴。

他にもTOKOHAMA MERは最初はとても感じ悪く描かれます。
取り残された被害者たちも最初は観客をイライラさせる描かれ方をされる。

変化をわかりやすくするためですね。

そういう…ある意味あざといわかりやすさを指摘してのことでしょう。

「期待し過ぎた」「予告編以上を期待するとそーでもない」

2.9~4.0の人の言葉です(笑)幅ひろッ!
これも、この作品の成功個所と思いっきり被るので後述します。

©2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会 配給:東宝

低評価と、低評価っぽい感想を上げてみました。

褒め言葉は一切書いていないのに評価点はバカ高いとか。
点数低くして、低評価の理由を書き始めたけど、結局最後は感動した点ばかりになって文章全体では大絶賛になっているとか。
点数と文章がちぐはぐでバグっているのは低評価だけでした。

では次、高評価を観ていきます。

映画『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』結末わかってても!高評価の感想たち

ほとんどが高評価ですからまとめるの大変ですよ♪
大きなくくりでまとめると以下のように分類できそうです。

・「想像を超えて来た」「期待を超えて来た」
・「すべて先が読めるのに感動」
・「ドラマ観てなくても面白い」
・「中だるみが一切ない」
・「ツッコミどころをハラハラが上回る」
・「中学生」
・「タワーリング・インフェルノ」「ダイ・ハード」「スポコン」

それぞれ観ていきましょう。

「想像を超えて来た」「期待を超えて来た」

「テレビドラマの映画化作品ってこの程度でしょ?」
…というなんとなくの期待値の低さがあった人が多いようでした。

「スペシャルドラマくらいで良いのでは?」
「わざわざ劇場でやる必要ないと思うけど、そこそこ楽しめるから観るけどね…」

ドラマを映画化した邦画に対して、このような感覚で捉えている映画ファンは多いようです。
ところが観てみたら想像を超えた…という感じ。

また、予告編で炎のCGが安っぽく見えるのに実際に映画で観ると迫力があったという意見も複数ありました。

「すべて先が読めるのに感動」「結末わかってるのにハラハラドキドキ」

成功要因のひとつです。

「ギリギリの状態でも最後は何とかなるんでしょ?」
「事故に巻き込まれるための前フリでしょ?」
「それは次に活躍する人のフリでしょ?」

と、いちいち展開が読めるわけですね。
そして、その読み通りになる…と。

「ほら来た思った通り」 → がっかり
「ほら来た思った通り」 → 待ってました!!

この違い。

先が読めてその通りになるのに、思った以上に感動してる…

というのを自覚しながら観ている人がとても多いようです。

「ドラマ観てなくても面白い」

「テレビドラマ版を観てなくてもわかりやすい親切設計」
というだけでも評価ポイントだとは思います。

でも『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』のこの感想についてはそれにはとどまらない。
ここに、この作品の凄みを感じます。

前日談を観ていなくても面白い。

のみならず…

・国内ドラマは観ない
・邦画は観ない
・ドラマの映画化作品は観ない

という人たちが、「気になって観てみた」結果4.0~5.0をつけまくっているのです。

この後も書きますが、ツッコミどころ満載なのにですよ。
そのツッコミどころがいかにも日本のドラマやドラマの映画化ならではの悪い部分なのにですよ。
この人たちもそれを認識しているのにですよ!

ここ重要ポイントですね。

「中だるみがない」

冒頭…掴みはOK!となる部分ですね。
見事に引き込まれます。

で、本編スタート、序盤の状況設定の部分のドラマ。
どんな人か?どんな関係なのか説明をしながらドラマが進む…
それを興味を途切れさせないんですね。
それでいて、長々とはやらない。

すぐにメインの横浜の火災が起こります。
そこからはビルの中でも外でも緊迫の連続。
緩急あるのに緊迫の連続。

ツッコミどころも「そんなバカな!」もあるのに中だるみしない。
そういうことを多くの人が書いています。

「中学生」

ネタバレになるのでキーワードだけ書きますが、中学生に触れた人も複数いました。
あからさまに印象的なシーンですから当然です。

心が洗われます。

低評価にあった「周囲の人をクズに描きすぎ」というのはこういう部分も指していると思います。
確かに中学生に対し大人の描かれ方が対照的でイライラしますからね。

でも、決して悪くない。
わたしも凄く好きなシーン。

「タワーリング・インフェルノ」「ダイ・ハード」「スポコン」

これは文字数の都合でキーワードだけ小見出しにしましたが(笑)

・火災パニックモノの歴史的大傑作スペクタクル映画
『タワーリング・インフェルノ』(1974年アメリカ)
・ほぼ全編がビル一棟の中でのシチュエーションアクションの名作
『ダイ・ハード』(1988年アメリカ)
・命がけレスキューものの人気シリーズの映画版
『海猿』(2004年~2012年日本)
・緊急救命ものの大ヒットシリーズの映画版
『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(2018年日本)

これらのタイトルは多くの人が比較作品として挙げていました。

『タワーリング・インフェルノ』と比べて邦画の欠点を指摘している人もいたのですが、印象的だったのは逆です。
『タワーリング・インフェルノ』の興奮や『ダイ・ハード』のハラハラドキドキを邦画で味わえたことの喜びを書いている人が数人いました。

楽しみ方をわかっていて粋だなと感じる感想が多いです。

「医療ものならぬ医療スポコンだ!」みたいな表現で絶賛していた人もいました。
なるほど面白い表現ですね。

少年漫画に通じるものがありますからね。

©2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会 配給:東宝

以上が、高評価の感想で共通しているところ。
あっさりとまとめましたがこの後じっくり書いていきますね。

高評価の人は一見ベタ褒めしているように見えるけど実はそうではないという点がポイントです。

ツッコミどころも具体的に突っ込んでいる。
そのうえで、

人物設定、関係性、演技力、脚本・演出、お約束の展開

をこう評価しているんです。

そのあたりの詳しい分析・考察の前にひとまず次

映画『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』twitterでの評価・感想

映画『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』を観た人の生の感想をtwitterから少しピックアップしてみましょう。

映画『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』評価・感想の考察

ごくごく少数の低評価の中にはかなり辛辣な言葉もありました。

「こんな浅い映画で感動しちゃう人が多い国だから特殊詐欺に引っかかるんだ」
「これが医療だと思われると危険なのではないか?」
「おかしな点いっぱいあるから冷静になろうよ」

…などなど…

気持ちはわからなくもないんですよ。
わたしも幼少期からハリウッド映画の凄さと邦画の弱さはずっと観比べてきました。
映画製作を専攻し、シナリオも撮影も編集も学びました。
だから言わんとしていることがわからなくはない。

でもこの映画『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』に関しては、自ら能動的に楽しもう、感動しよう、興奮しようとしている人たちが高評価をしているのがわかります。
そんな人たちに「冷静になれ」と冷や水を浴びせる必要はないでしょう。

医療への誤解を心配したり辛らつな言葉で嘆く必要もないです。

現実との違いは分かったうえで観ているから。

それこそ「冷静に」レビューを読んでいけばわかることです。

ということで、映画『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』の評価・感想を冷静に考察してみます。

おバカな大絶賛は少ない 冷静な大絶賛

低評価を見つけるのが本当に大変なほど、高評価の嵐でした。

でも、この映画の欠点やツッコミどころは高評価を読んでいるだけでもドンドン目に飛び込んできます。

  • 無理設定あるけど
  • ご都合主義だけど
  • 展開読めるけど
  • 次誰の見せ場かフラグ立ちまくるから読めるけど
  • 不死身だし奇跡に無理ありまくるけど
  • 予告編通りだけど

みんな、こんなことをツッコミながら4.0~5.0点を付けまくっています。
「冷静になれ」という必要はない。
もともとみんな冷静です。

この映画のツッコミどころはちゃんとわかっている。

結末もどうせ「死者は…ゼロです!!」なんでしょ?
とほぼほぼわかっている。

「良くも悪くも日本映画だな~」と感じたことも、
どの部分でそう感じたかもちゃんと自覚できている。

それでも

4.0~5.0満点続出の高評価祭り。

みんな冷静に大興奮を選んでいる。
これが映画『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』の特徴です。

この映画がどんな映画で何を受け取ればいいのか?
それを冷静に理解した上で、
そのように楽しもうという姿勢に自らなっている。

ほとんどがそういう人たちによる高評価祭りでした。

じゃあ、冷静にツッコミながら高評価につながる理由はなんなのか…

わかり切った結末に向かっていく力強い面白さ

©2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会 配給:東宝

とにかく伝えたい感情に絞って、作り手のエネルギーをありったけ注ぎ込んだ

これがまずこの作品の成功要因だと思います。

医療従事者への尊敬や感謝、
それ以外の「誰かのために一生懸命な人たち」への応援を、
アクションヒーローの活躍という興奮と感動で届ける
…ということ。

それ以外のことはちまちまやりません。
その代わりそこに全集中します!…と。
ツッコミどころに対して高評価の人達のレビューをもとに冷静に答えてみましょう。

あり得ない?これが医療と思うのは危険?

『アベンジャーズ』はあり得るんですか?スーパー戦隊は?『西部警察』は?
MERもそういうヒーローものだと割り切っていますよ。

リアリティない?

上記の通り、そんなことは充分わかっています。
爆発に巻き込まれて揺れる車の中でメスを握って手術なんて…
他にも普通なら死んでるような事ばかりですよね…普通なら。

だからヒーローに登場してもらうんですよエンターテインメントだもの。

特殊車両で颯爽と現れて人を助けて去って行く。
まさにヒーローそのもですよね。

©2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会 配給:東宝

とは言え、あり得ないヒーローもエンターテインメントとしてハラハラドキドキするためには、リアリティという嘘が必要です。
大きな嘘を楽しむための本物の部分。

それが、『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』の場合は役者の熱量のある真剣な演技と…もう一ヶ所。
手術シーンの手元です。

とにかくそこに集中して、他は可能な限りでいい。

普通はドラマでも映画でも医療行為の手元は専門家が演じます。
だから手元と役者の顔は別撮り。

でもこの作品は手元も全部役者本人が演じています。
鈴木亮平さんは本物の医者が持っている練習用の人工皮膚や器具を持ち歩いて空港で止めれられてしまうほどの熱の入れよう。

リアリティはそこに集中しているんです。

だから現実には存在しえない超人的なヒーローを登場させても観客は感情移入してハラハラドキドキできる。
大きな嘘の中にも重点的に描かれるリアリティの意味。

それをとてつもない真剣さという熱量で表現してくれる。

観客はそれを冷静に理解して、自ら受け取って、自らドキドキし感動することを選んでいる。
わかっていて能動的にエンターテインメントを楽しんでいる。

回想シーン多くてテンポが崩れる?

質の高い映画を知っている人ほどここは感じているはずですよ。
「そんなに説明しなくても感じさせるのが”いい映画”でしょ?」って。

物語を語る側、映像作品を作る側のカッコよさ、スマートさが計られる部分でもあります。

『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』は、国内のテレビドラマと比べてもやりすぎなほどの回想シーンの使い方をしています。
映画ではちょっとあり得ないです。

それにも関わらず、多くの人が具体的にこの部分を高評価ポイントで上げていました。

シリーズを初めて観た人がまったく混乱せずにわかったことの理由の一つに挙げています。
「ドラマ未見の人にもわかりやすい親切設計」の部分です。
……まあ、なるほどと思えなくもない。

ところが、初めて観る人だけではない。

テレビドラマからのファンも
「回想で泣いちゃう」「回想ズルい」「要所要所でハイライトあってよかった」
とけっこう多くの人が書いている。

その上でドラマ未見の人もファンも4.0~5.0満点をつけている。

わたしも1回目のときは個人的には「回想多すぎ」と思ったのですが、
このレビューの結果は無視できるレベルではないほど多かったです。
※わたしは2回目は「思ってたより回想少なかった…」とより観やすく感じました。

特にドラマ未の人や、テレビドラマの映画化モノは観ない主義の人、国内ドラマや邦画は観ないけど…
という人たちまでもが好意的に4.0~5.0をつけている。

明らかに功を奏しています。

泣かせようとしている感、先が読める?

邦画の悪い癖による「泣かせようとしている感」バリバリ……でも泣いてしまう。
「ハイハイ、次はこの人の見せ場が待ってるわけね」ってバレバレ……なのに泣いてしまう。

大衆演劇の時代劇などで正義のお侍さんが登場して見栄を切ると
「ヨッ!待ってました!」
と、観客が声を上げる。

それに近いと思います。
それを現代劇でやっている。

ドラマ『半沢直樹』シーズン2は悪を懲らしめる水戸黄門ばりの展開と顔芸ばりの表情筋演技でそれをやっていました。
『TOKYO MER 走る緊急救命室』は危機に瀕している人を助けるという展開と真剣な演技による熱量でそれをやる。

©2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会 配給:東宝

仮面ライダーやスーパー戦隊の変身シーンに当たるのが
ピンチでもうダメか…というときにデ~ン!
と登場するMERメンバー。

期待させて期待通りにやってくる。

映画の表現としてはダメと言われかねない部分も割り切って、むしろ振り切ってやりきる。
この作品で大切なこと、見せたいこと、受け取って欲しいことはそれでこそ伝わるから!

そう思ったら覚悟を決めて捨てるところは潔く捨てる。
もう、この決断はいっそアッパレじゃないでしょうかね。

「この映画は良くも悪くも『ザ・日本映画』でいいのだ!その代わり全身全霊だ!!」
って。

事実、低評価の人も役者の演技には文句をつけていませんでした。
むしろ演技はよかったという人がほとんど。

『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』に限っては
演技=エネルギーでもあると思います。

実際に用意できた製作費や、撮影環境以上に説得力を持たせる。
非現実的なこと、奇跡的なこともこの作品の中ならOKと納得させる。

ある意味力技ですが、その力技を認めさせるエネルギー。

そしてその演技は、キャストだけではなく
監督はじめスタッフみんなの熱意で作られた”場”のエネルギーが引き出している。

そういうことだと思います。

観る人の「楽しもう!」を呼び起こしている実績

低評価の人が指摘しているツッコミどころは、
高評価の人も同じところをツッコンでいる。

高評価の人は「~だけど」とツッコミどころを認識したうえで作品を評価する。
発信者の意図を自ら受け取りに行っている。

この事実の鮮明さ。

幸せはしてもらうものじゃなくて自分でなるもの

エンタメは楽しませてもらうものじゃなくて自分で楽しむもの

作品そのものが観客のそういう姿勢を呼び覚ましている。

ここがミソですよね。
制作者側の意図通りに観客にも受け取ってもらう…
このことのなんと難しいことか。

テレビドラマ『TOKYO MER 走る緊急救命室』が始まる前に脚本の黒岩勉さんがコメントを出されていました。

脚本・黒岩勉さん
コロナ禍におきまして、人間の一番キレイな部分といいますか、心を動かされる瞬間というのは、自己犠牲を払って他の誰かを助ける姿なのだなと改めて思いました。
こんな時代だからこそ、誰かのために必死に戦うヒーローが見たい。
最強のナイスガイ・鈴木亮平さんとその仲間たちがきっと叶えてくれます。
とても真剣な医療モノなのですが、とことん痛快な「アクションエンターテインメント」を目指して書かせていただいています。
医療従事者だけではなく、その周りでサポートする人々も含め、危機的・絶望的な状況の中でも、冷静に、的確に、前向きに、ただひたすら命を助けようと奮闘する人たちのお話です。
これを見ると、自分の周りにいる人たちに感謝したくなる。ささくれ立っていた気持ちがちょっとだけ優しくなる。そんなテレビ番組になれれば最高に幸せです。

ドラマ公式ページより引用

ドラマのスタート前からず~っと、一貫してつらぬいていることがわかります。

物語や映像制作に限らず、企画やプレゼンや授業などなど…
意図通りに伝えることの難しさを経験したことがある人は想像できるでしょう。

「伝える」よりも「伝わる」を…

映画『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』は
これを叶えたという事実を多くのレビューが証明していると思います。

『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』というドラマがありました。
このドラマも黒岩勉さんの脚本。

このときは、医療従事者やリアルな薬剤師さんたちからの批判もSNSには飛び交っていました。
「実際の現場ではありえない」と…
素敵なドラマでしたけどね。

しかし『TOKYO MER 走る緊急救命室』は実際の医療従事者の人たちも楽しんでいます。
しかも誇りを取り戻したり、勇気をもらったり、やる気をもらえたりしている。
それもレビューからわかります。
現実にはありえないことは承知の上でですよ。

「ありえない」という声を、あえてそっちに全振りすることで称賛以上のものにする。
リアルな現場の人たちの心を揺さぶるほどに。

お見事でしょう。

これは批判できないレベルの大成功であることをレビューサイトの評価・感想が証明していると思います。

映画『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』わたしの評価・感想 結末への不安

では最後にサラッとわたしの評価・感想も書いておきます。
大体、レビューの通りなのでもう書くことがほとんどないですが(笑)。

書けていないことを少しだけ。

わたしの低評価ポイント

レビューサイトの低評価の人や高評価ながらも突っ込まれていたポイントと全く一緒です。
初見の時は「回想見せすぎだな~」と言葉にして心の中で思っていましたから。

結局2回観て、2回目は「最初の印象ほど多くもないな…」と感じました(笑)
そのうえで、確かに効果的ではあるな…とも思えました。

わたしが嫌いな日本映画の要素は確かに実はたくさんありました。

でも、高評価ポイントが「そんなところを論じる作品じゃない!」と爆風のように吹き飛ばしてくれます。

わたしの高評価ポイント

プロローグの見せ場、空港でのシーン。
走る喜多見の脚が映った時点でわたしも泣いていました(笑)

ハイ!も~素直に楽しみました。
もともとドラマを毎話「コレは劇場で感じたい種類の興奮だ!」と思って観ていました。
待ちに待った劇場版です。
だから1回ではおさまらず、2回観に行きました。

喜多見と千晶(妻)の関係の導入から、YOKOHAMA MERとの対立バチバチ感。
厚生労働大臣の役回りも、喜多見と音羽の関係も…

もう全部素直に。

©2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会 配給:東宝

予告編でビル内の爆発でMERメンバーが吹っ飛ぶシーンがあります。
予告編だけ観ていたときは邦画らしい安っぽいCG感だなと思っていました。
ところが本編ではビクッとなって「うわッ!ヤバくない!?」と心配してしまうほどの迫力でした。
そこはいい意味で予告編詐欺。

手術シーンは手元がアップになるシーンもありますが、あれも役者さん自身の手なのでしょう。
手の動きだけでも演技しているんですね…!
2回目のときにその手の演技の細かさにも気づけました。

期待通りの骨太アクションエンターテインメント。

完成発表の記者会見や舞台挨拶の様子をネットで観ましたが、松木彩監督!
役者さん達とは違って人前に立つことに慣れていない様子。
それでも一生懸命にそこに立って、声をだしている姿…
あの人がこのシリーズを撮ったのか…!?

と応援せずにはいられない佇まいでした。

劇場版を作ってくださって本当にありがとうございます!!

というのがわたしの感想です。

簡単にわたし自身の感想・評価の考察も

わたし自身の感想・評価を読み返しつつ、客観的に感情を見つめてみて…

ひとつ気づきました。

わたしが日本映画の嫌いな部分をこの映画は割り切って振り切ってやっている。
それが功を奏しているのも事実ですが、もうひとつ重要なポイントがありました。

わたしが日本映画で「最も」嫌いなことは…

  • どうしようもない感情を爆発させて「うぁ~!!!」と嘆き叫ぶシーンが多すぎる
  • 自分の意見を相手に熱くぶつける演技で相手の胸倉をつかみがち

コレです。表現の幅が狭すぎてテンプレすぎて興ざめしちゃうんです。

映画『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』ではコレを一切やりません。

どうしようもないことの連続なのに嘆く前に何とかしようとする。
意見の衝突も胸倉つかまず演技で緊張感を出せる表現の幅広さ。
喜多見チーフなんか笑顔で「…ですねぇ」ですからね。

だから、安っぽさの中にも良い圧力が生まれる。

©2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会 配給:東宝

少なくともわたしがこの作品の緊張感という圧を逃さずに観れるのには、この2点は大きく響いていそうです。

結末わかってても面白い!『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』評価・感想まとめ

まいどまいど、「死者は…(ためて)…ゼロです!」ってなる。
そういうシリーズです。

そもそものプロローグで都知事がそれを目指して作ったと言っていますからね。
それがTOKYO MERという組織だと。

結末はわかっている。

「待っているだけじゃ助からない命がある」危険な現場へレスキュー隊よりも先に突入しちゃうあり得ないスーパーヒーロー。
助けを求めている人を自らの危険をかえりみず助ける。
ピンチで「もうダメかッ…」というときに仲間がやってくる。
展開もお約束。

映画『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』もドラマと同じ。
ファンの期待通り、予想通り、お約束。
なのに喜びは予想を超えて来た。

展開は予想通りなのに感動が期待を超えた。

さらに、ドラマを観たことが無い人たちも4.0~5.0を付けまくる。
国内ドラマ・邦画苦手な洋画ファンも4.0~5.0をつけまくる。

ちゃんと冷静にツッコミどころを理解した上で高評価をつけまくる。

そういう映画が『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』

これが、歴然と出ている結果でした。

けっこう、読み取る力が試される作品なのかもしれないですね。
好みが合わないのは仕方ないとして、
作品が伝えたいのはコレだよ!
を読み取れるか?

いや、作品側はそこを読み取る力を観客から引き出せる域に達している。

わたしは『め組の大吾』という漫画が大好きです。
アレもちょっと常人離れした勘が働く天才主人公が現場のセオリーを無視して突っ走ります。
ツッコミどころを物語の障壁にしてそれを主人公たちに乗り越えさせる。
フィクション、エンターテインメントという力を使って。

そもそもわたしはジャッキー・チェンが好きで映画好きになりました。
ドラマ『西部警察』も大好きでした。

ツッコミどころは満載。そんなのありえないの連続。
それでも楽しめるのは…
ジャッキー・チェンは自身の体を張ってアクションをやるというリアリティ。
『西部警察』は本物の爆発の中を車が駆け抜けて本当にクラッシュさせるというリアリティ。

それがあるから映像の中では「そんなバカな」が多くても、現実のわたしは勇気や元気をもらってきた。

映画『劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室』は、
そういう観かたができる人にはおススメの作品だと思います。

ツッコミどころをあげつらって批判してくる人には「ですねぇ」と笑顔で返してあげて、
自分はちゃっかり作品を楽しんじゃいましょう♪

©2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会 配給:東宝

全ての物語のために

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